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地域支える 矢野賞受賞者

強い経営で前進

(平成29年1月1週号 特集)


 岡山県内で農業の振興に貢献した青年農業者を対象に贈呈される矢野賞。今年も新たに3人の受賞者が発表され、優れた技術、先進的な取り組み、新技術の開発などで地域農業の発展に大きく貢献している。地域を支える担い手として今後の活躍が大いに期待される。

 

良品生産へ独自技術開発

チンゲンサイ 東山 洋さん 赤磐市

201701_1① 赤磐市でチンゲンサイと水稲の複合経営を行う東山洋さん(40)。独自の技術を開発し、季節を問わず高品質なチンゲンサイの安定生産を実現している。
 東山さんは水稲を栽培しながら、さまざまな工夫のもとチンゲンサイ(33㌃)を年間6回以上栽培。チンゲンサイの栽培はシステム化され、ポイントを押さえれば同じように栽培できるという。注目すべきは気温の違う夏と冬でも品質と収量を維持しているという点だ。
 東山さんが開発した主なシステムは、夏季の「屋根散水冷却システム」と「木質チップによる保温」で、これにより安価にハウス内温度の改善を図っている。
 屋根散水冷却システムはソーラーパネルを利用し、夏季の日照時、ハウスの屋根にはわせた点滴チューブで水を流すというシステム。気化熱によりハウス内部でもおよそ外気温と同等に温度を抑制することができ、導入前と比較して商品化率に一定の効果が上がることを実証した。
 木質チップによる保温は、冬季にハウスの内側に木質チップを積み、ハウスの保温性を高めるといったもの。通常、ハウス側面近くの畝は気温の低さにより生育が遅く、収穫時期に遅れが出るため、作付けサイクルによっては破棄せざるをえない場合があった。しかし、木質チップの蓄熱効果により、夜間の気温低下などによる生育の遅延が改善され、畝単位で一律に収穫することを可能にした。

積極的に食育活動地域農業を牽引

 野菜の生産性を向上させる新技術の開発・導入に加え、地域の食育活動への取り組みなどが高い評価を受け、地域農業の牽引役として期待されている。東山さんは「これからも長く農業を続けていきたい。自分の作った野菜や地元のもののおいしさを知ってもらい、地域農業の発展に貢献できれば」と話す。

 

極早期親子分離で一年一産

繁殖和牛 孝本 真二さん 吉備中央町

201701_1② 「自分のできる範囲で和牛繁殖経営を行っていきたいと考えている。持っている資源を無駄なく活用し、受胎率を高く、子牛の事故率を低くすることで安定した出荷ができれば」と話す吉備中央町の孝本真二さん(38)。
  孝本さんは、繁殖牛の分娩後、極早期に親子を分離し、人工哺育を実施している。これによるメリットは、親牛の発情が早くなることで、ほぼ一年一産を実現しているということ。離乳までの哺育によるスペースを必要としないため、多頭飼いに必要なスペースを最小限にすることができる。
 また、1頭ごとに管理台帳を作成。細かな個体管理を行うことで異常の早期発見と対策に努めている。哺育技術にも優れ、子牛の事故率は2%未満という極めて低い数字になっている。自分のできること、資源を活用するという考えにより、自給飼料の生産や稲わら収集、放牧地を活用し、飼料コストの低減にも取り組んでいる。特に繁殖牛の粗飼料については、「買わなくてもやっていける」と、完全自給を達成している。

各種イベント企画 交流の場生み出す

 青年農業クラブにも積極的に参加。立ち上げや運営に携わり、地域の若手リーダーとして周囲を牽引してきた。また、現在まで続く異業種交流会の基となる酒造会社などとの交流企画や、若い農業者の婚活イベントなどさまざまなイベントを企画し、活発な交流の場を生んだ。孝本さんは「仲間とのつながりが大事だと思っている。地域農業の担い手があまりいないので、増えてほしい」と話す。

 

大規模園地で効率経営

モモ 田邉 孝一さん 倉敷市

201701_1③ 田邉孝一さん(39)は生産技術の向上と規模拡大を進め、モモの高品質、安定生産を実現している。
 田邉さんは、倉敷市で2000年から兼業農家として、04年からは専業農家として営農している。祖父の代から手掛けていたモモの栽培技術を受け継ぎ、また農業後継者クラブでの勉強で技術を研鑚していった。
 樹勢を抑え、肥料の使用を控えるといった弱剪定、摘蕾重視の栽培方法をとっている。細かな樹体管理が必要となり、作業に時間・手間がかかるが、生理落下が少なく、安定生産ができるという。
 樹園地の規模拡大を進め、現在150㌃の大規模なモモ専業経営を実現している。それと同時に、山にあった段差の多い樹園地を整地し、作業効率が上がり、適切な日照を得られる計画的な植栽を行っている。特に高所作業車などの農機具が効率的に回ることができるよう樹間をとっており、農機具がスムーズに動ける樹園地は事故率の低減にもつながっている。

新規・若手農家の頼もしい相談役

 県内の生産者組織の立ち上げ、勉強会の参加など地域の担い手として精力的に活動している田邉さん。新規就農者や若手栽培者に対して、技術の向上や経営の安定についての相談に乗るなど、地域内でも頼れる存在として期待されている。「地元でも若手後継者が増えてきている。今後、そういった若手、新規就農者を増やすため、安心・安全な生産物を消費者へ届け、モモの産地としての地位を向上させたい」と話す。